老人施設で50人規模のクラスターが起こった理由

 勝てる恋愛テク

「おそらくコロナじゃないから大丈夫だよ」

関西の老人福祉施設で利用者の検診にあたっていた医師は当初、そう言い放ったそうです。最初の発熱者は4人の利用者。認知症の進行もあり、味覚障害、倦怠感、喉の痛みなどが確認できず、ただの風邪と判断。翌日には、発熱者がさらに増え、8人に。翌々日には10人を越え、最初の発熱者から5日後に20人以上に。このあたりから、感染症の蔓延を疑い始め、本来4月半ばに流行することのないインフルエンザの検査を実施。インフルは陰性で「コロナかも知れない」と、施設に備え付けのコロナ検査のキットで検査を行うと4人中4人が陽性。慌てて保健所に連絡し、施設の全利用者、職員のPCR検査を行うと50人近くの陽性が確認されたそうです。

同施設では、関西で最大規模のクラスターとなったわけですが、当初からコロナの疑いがありながら、検査を行わなかったのには、風評被害を恐れた施設運営者側の思惑が見えます。コロナだとしても自然治癒で完治し蔓延しなければ揉み消せると思ったのでしょうか。コロナ発覚後、保健所の検査が入ったのは2日ほど経ってから。保健所は事の重大性を認識していなかったようで、施設側は発熱者が20人以上いるにもかかわらず、事を大きくすることを避けるため陽性反応が出た4人のみしか報告していなかったのではないか、との噂も施設内では囁かれているそうです。

コロナ患者を収容してくれる病院は見付からず、重篤者を含む利用者の看護、介護は引き続き同施設で行うことになったといいますが、陰性や検査結果を待つ職員は感染への警戒から出勤を拒否。運営者側は「とにかく欠勤は受け入れられない」や「フロアが違えば感染のリスクはない」という主張を繰り返し、コロナ発覚後も2-3日は防護服の着用もなく勤務を命じたとのこと。

職員としては、職務と感染リスクのどちらを取るかの究極の選択を強いられているわけですが、感染し重篤になれば命にかかわる危険があるため、恋人や家族のことを思いますと出勤は躊躇われるでしょう。施設の運営者はコロナウイルスを甘く見て、あわよくば大事になることは避けられるのではないか、と目論んだわけですが、その目論みが結果として最悪の事態を引き起こしたわけです。

最初の発熱者が出た時、施設運営者の脳裏には「コロナが出たなんて世間にバレれば施設の評判が悪くなる」「経営も悪化するだろう」という保身のことが過り、「もし発熱者がコロナで職員や他の利用者に感染すれば大変な迷惑をかけてしまう。重篤にでもなったら取り返しがつかない」とは思わなかったのでしょう。恋愛関係にも言えますが、身近の人のことをどのように考えているのか、問題への対応の仕方でわかることがあります。
(記事:スタッフ)

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